INTERVIEW<GIFTED designer/増﨑啓起>②素材とオリジナリティ


ジュエリーデザイナー兼クラフトマンの増﨑啓起。

主宰する福岡のアトリエ併設ジュエリーショールーム 「MEDIUM」を拠点に、ブライダル&ファインジュエリーラインの「YES」と、シルバーを主な素材とした現代における普遍性を再考するユニセックスなジュエリーライン「GIFTED」の2つのオリジナルブランドを中心に展開している。

今回は全3部に分け、一人の人間として、また一作り手として敬愛する彼の来歴や今に到る思考の断片にインタビュー形式で触れて行く。

第2部となる今章では素材や現代におけるオリジナリティへ対する考えについて話をうかがった。

※前章は以下リンクより

INTERVIEW<GIFTED designer/増﨑啓起>①これまでの変遷


ゴールドやシルバー、鉄やダイヤモンドなどの素材に対する向き合い方や使い分けについて

窪田(以下K):作品に用いる素材選びについてお聞かせください。

増﨑(以下M):素材の選択に関しては特に制約を設けているつもりはあまりないのですが、ここ10年の仕事を振り返ってみると主に貴金属を使用する事が多かったように思います。

K:2011年の東日本大震災をきっかけに2012年に東京から北九州へと拠点を移しショールームをオープンされたと聞いていますが、10代中頃からこの仕事に就き、要所要所で幾つかの大きな節目があったように思います。使用する素材に関しても変化があったのでしょうか?

M:インディアンジュエリーを制作していた頃は当たり前のようにシルバーが身近な素材でしたし、石を使うのであればターコイズや珊瑚といった素材が近くにあったのでそういった素材を使用する事が多かったですね。

専門学校での在学中を含め、コンテンポラリージュエリーを制作していた頃は在学時に師事していた故・中村隆一郎の影響で鉄を使い始めたのですが、他にもキャンバス生地や真鍮、石膏像や写真に廃材等、素材の縛りを設けずに様々な素材を実験的に使用しながら作品を制作していました。とはいえ、やはりそもそもの入りが地金をベースとしたインディアンジュエリーだったせいか、鉄やシルバー、ゴールドといった金属をメインの素材として作品を制作する事が多かったです。

なので、自分は異素材の探求というよりは割と一貫して金属加工を主軸にジュエリーを制作して来ているのではないかなと思います。 鉄について言及するとすれば、貴金属と違って鉄は土に還る素材という意味で、僕らと近く親しみやすい素材だなとも思いますね。鉄という、ある意味では脆さや儚さみたいなものを感じさせるような素材を金や銀という貴金属と合わせて使い、対比させながら一時的に共存させる事で感じられるものがあるというか。 それは僕らという存在の不確定さや有限性だったり、逆に形式を変えながらもきっとこの先も無くならないであろう祈りや信仰といったものが自分にとってどのようなものであり得るのか?というのを作品を制作しながら自問しているようなところがあるかもしれません。

K:昨今様々な作品への採用が見受けられるダイヤモンドはいかがですか?

M:ダイヤモンドに関しては、昔は食わず嫌いみたいな具合であまり使っていなかったのですがここ最近は好んで使っていますね。 理由としては無色であるところや硬く割れにくいところ。比較的安心して石留めが行えるところというように制作上で作り手に優しい素材であるという風に捉えているところもあると思いますが、僕にとって金、銀、鉄、ダイヤモンドはジュエリーにおけるグレースケールみたいな置き所で、あまり色彩を感じないのですよね。 もちろん、金は「金色」或いは「黄色」で色があるじゃないかと突っ込まれればそれはそうなのですが、何というか感覚的に上にあげた素材は僕にとってジュエリーにおける三原色や四原色みたいなもので、色石が色彩なのであればそれらは無色と捉えているようなところがあります。

「ジュエリー」というキーワードから色とりどりの宝石が散りばめられた色彩豊かな宝飾品を連想する人も居るのだと思いますが僕が思い描くのは金や銀を素材とした地金表現に寄ったジュエリーで、それらの色は感覚的に無色というか基本的な貴金属の色味で構成されたジュエリーです。 色石に関しては依頼があれば使用することはありますが、進んで使用するかというと決してそうではなく、時折り昔の名残りでターコイズを使用することはありますがそれはどちらかというと自分の原点の1つとなっているインディアンジュエリーというものの現在の置き所を折々のタイミングで確認する作業に近いように思います。

K:GIFTED作品の中でもゴールドを用いた作品はありますが、比重としてはやはりシルバーが大多数ですよね。 ただ最近はシルバーとゴールドのコンビアイテムなども少しずつ増えて来ているように思うのですが、ゴールドに関してもダイヤモンドのように年々捉え方は変化されてってるんですか? 選ぶ素材への寛容さというか身軽さというか。まぁ最近は本当に金が高いですけど。

M:金は世界情勢の影響で暴騰し過ぎていて今後は以前のように気軽には使用できない素材になってしまいそうで困ったなー、、、とも思うのですがそれは横に置いて、そうなってくると銀の再評価みたいな事が今後少しずつ起こり始めるのではないかなと何となく思いますね。

昨今の地金の暴騰を踏まえずとも、僕は以前から永くこの世に形を留めていられるジュエリーの素材は金よりも銀だな、、、という事を感じていまして。 理由はある程度はっきりしていて、金はその価値の高さ=換金性の高さ故に時代を越えられず換金され潰されてしまう事が多いのですが、銀は素材の価値が低く換金しても大した金額にならないので何だかんだ残っているものが多い印象なのですよね。

自分の場合は北九州へ移住してショールームを構え今年の11月で10年になるのですけれど、今までに地金を下取りして作らせてもらった大半のリモデルの依頼は金かプラチナのもので、シルバーの依頼は帯留めとして作られたカーヴィングが施されたオパールのレリーフを帯留めの台座から外してブローチに、、、というような特殊な依頼以外はほぼ皆無だったという体感もあります。

昨今のヴィンテージブームを鑑みても圧倒的にシルバーのアイテムが多い印象なのですが、その背景には金と比較した際の換金性の低さというのも一役買っているような気がします。 まぁ金は仕事で使用してきた経験による偏りもあるとは思いますが本当に魅力的な素材ですよね。削った粉まで美しい。 魔力と言っても良いような、抗い難い引力が金にはあるなという確信めいたものが自分にはあるような気がします。

なのでというかなんというか、以前のように金無垢のジュエリーは作り難い時代になってはしまいましたが今後はシルバーとゴールドを良い塩梅で組み合わせ作り込まれたコンビタイプのジュエリーが増えてくるような気がしています。GIFTEDとしては引き続きシルバーをメインの素材に据えて時折コンビタイプのやり込んだジュエリーも作りつつ、金無垢のアイテムは縮小していくような流れになるのではないかなと。

オリジナリティというのは小手先の話ではなくて総合的な「態度」

M:僕は使用する素材の種類や使い方でオリジナリティを示そうとするタイプの作り手では恐らくなくて、あくまで金属の造形で勝負するタイプですね。 でも、別ラインのYESは金、鉄、ダイヤモンドとか使っていると素材選びでオリジナリティ出ちゃってるんですかね?別にどれも僕にとっては普通の素材なので殊更オリジナリティをでっち上げようとしてるつもりもないのですけれど。

K:シルバーは錬金術でゴールドは錬成術って誰かと話していて、昨今のヴィンテージブームなんかは特に核心捉えてるなぁ、と感じたのを思い出しました。 現代におけるオリジナリティが主に何を指すのかってのには疑問を感じますが、ブレない・ブレてないってのは一つの指標にはなってるのかな?とは思いますね。 デザインの目新しさだけをオリジナリティと数えるのはナンセンスだとする事を前提にですが。 そういった意味では増﨑さんはどしんと腰を据えている感じはありますけどね。

M:「オリジナリティ」という朧げな存在に対する人間の幻想というか認知バイアスみたいな領域は僕自身ずっと考え続けていることでもあって興味が尽きないですね。

結論から言うと、オリジナリティというのは小手先の話ではなくて総合的な「態度」だと思っているところがあります。 今までに作ってきた物はもちろん、作風の変化の道筋や作り手の生き方や思想的な部分まで含めて、引きで眺めた際に感じることのできる佇まいというか質感というか。

K:目より先に手は肥えないって言いますからね。

M:さもブレていないかのような素振りをポーズで周囲に振りまくのは凄く簡単なので、ブレる、ブレないといった印象に関しても僕は信じていないかもしれません。 極端な事を言えば同じ事をやっていれば割とそれでゴリ押せてしまったりするようなところも間違いなくありますからね。 作家性の確立と自己模倣は紙一重というか。 あくまで僕の印象なんですが、割と皆さんすぐに褒めてくれちゃいますし僕自身も他の作り手の作品を見る時には基本的なスタンスとしてポジティブに受容できる部分を探しますし。

もちろんそういう場面では「ありがとうございます恐縮です」って変に勘ぐるわけでもなく素直に受け取っておくのですけれど、それに胡座かいたら終わりだと思っているので常に自分の中に最も相手にしたくないアンチを住まわせるように心がけています。

最近は「オリジナル」にせよ「パクり」にせよ昔よりも言葉が軽んじられて使われるようになっている印象があって、そこに対しては何だかなーと思うことも多いですね。 特にコマーシャルジュエリーというものは様式の参照度合いと再配置のさじ加減による、その微妙な差異ですとか、クオリティや価格の高低をどのように総合的にブランディングして独自性のような物を纏って世に放つかという世界だと思っているので、皆さんがどのような印象を持たれているかは分かりませんけれど、案外僕自身は漠然とした「オリジナリティ」みたいなものは信じていないのですよね。

命を削りながら追求しているという自負はありつつも、同時に信じていないという両義性の間に身を置く事を是としているというか。 物体そのものが備え得るオリジナリティに関して言えば「無いよりはあるに越したことはないけれど、そうは無い」という認識で、僕の場合はジュエリー以外の形式での作品の発表だったり、今は少し距離を置いているコンテンポラリージュエリー畑での作品のアプローチだったりと、あくまで「総合的な態度」で特異なオリジナリティと言われるようなものを構築していこうとしているので単体の作品や商品においてオリジナリティを主張するというのはなかなか厳しい場面が殆どだなぁという風に思います。

その観点で見て、GIFTEDの商品で物体としてのオリジナリティを声高らかに主張できるものがあるとすれば、チェーンの構造とデザインですかね。 それ以外はあくまで独自性を備えた「式」を軸に、誰もやりたがらないような作り込みと、周囲に変な気を起こさせないようなクオリティの高さを心掛けて奮闘しています。 僕が大切にしているのは、実際の制作において「こんな事できたら凄いんじゃないか?」という思いつきを具現化するためにコストを度外視して青天井でひたすらに食らいつく事が必須で、出来るまでやるorどう頑張っても物理的に成立しないことが明らかになるまでやるという実践の積み重ねですね。 要するに率先して無茶をするということです(笑

ただ、僕はGIFTEDとしての活動を継続することで「オリジナリティ」という朧げなものを自問し続けているようなところがあるかもしれません。 鏡面でTバーのブレスレットを目にしただけで実際の造形の差異には一切目もくれずにボソッと「シェーヌダンクル、、、」みたいな、こう言っちゃアレなんですがそれ位の解像度でしか対象を見ていない人だってこの世には無数に居るわけで。 それはもう捉えている世界や見えているものが人によって異なるので仕方のない事ですよね。 そういう実体験を経て、近年は敢えて一歩間違えるとありきたりとも捉えられかねないメジャーモチーフに取り組んだりしている気がします。

自問しているのと同時に見てくれる人に対しても、あなたにとってのオリジナリティというものはどういうものですか?というのを問うてもいますね。 パッと見て分かりやすいオリジナリティや作家性というものを僕がGIFTEDにおいては何なら遠ざけようとすらしている理由は、コンテンポラリージュエリーという分野で作家活動をしていた事の揺り戻しみたいなところがありそうです。

斬新なコンセプトに人と違う素材、誰もやっていないことをやるという幻想を競って追求するうちにプレイヤーが増えてコンテンポラリージュエリーそのものが目的化してしまいシーンが形骸化してしまったというのを実体験として見ているので、そういう飛び道具的な作家性ではなく、逆説的にコマーシャルジュエリーという平凡な領域である程度の制約の中に在りながら、どうしても滲み出てしまうようなオリジナリティを追求しているとも言えます。 見えない人、見ようとしない人には見えないものですけれど、何でもそうだと思いますのでそれはそれで別に構わないなと。 これだけ色々と書いておきながら「オリジナリティなんて究極のところ気のせいでしょ」みたいな元も子もない事を思う自分も同時にきちんと内在しているので、絶妙なバランス感覚なのではないかなとは思いますね。

K:幻想をどう具体化するのか・したのか、みたいな手段ないし工程がオリジナリティを叫ぶなら含まれるべきだとは思いますけどね。 まぁ「究極気のせい」って言う形容がなんだかとてもしっくり来た感じがありますが(笑

素材云々の話からでしたが、うかがった点を踏まえると、自問自答していく上で手先をあれこれ散らしたり増やすよりも、ある種一定の自己で何が出来るかやりたいかっていう定点観測を進めているような印象です。

M:そうですね。 小手先のどうこうよりも、その前段階というか、手段の選択や作り手のアーティチュードみたいなものにこそオリジナリティは宿るような気がします。 「気がする」領域を1番重要視していますし「気のせい」というのは一周回って的を得ているかなと。 自問自答を繰り返していると自己矛盾みたいなものも出てくるので、その自己矛盾と向き合ったり、その矛盾を正そうとする仕草に結果として変化を促されるような場面もあったりするので、定点観測を心がけつつ変化も歓迎できるようなスタンスというのを意識的に維持していますね。

シルバーアクセサリーというムーブメントが結果的に残した量感的な様式や美意識というのは一過性のものではなくて結構芯がしっかりしているようにも感じる

K:個人的に増﨑さんの作る作品ってプラチナやホワイトゴールドなんかも親和性高い様な印象を受けますがこの辺りはあまり使われないですよね? まぁプラチナは素材としてファッションジュエリーに用いられる事が結構稀な所がありますが。

M:プラチナに関してはダイヤモンドとの親和性は高いのでハイエンドラインのYESではイエローゴールドとのコンビアイテムで部分的に使う事もあるのですがGIFTEDではあまり使っていないですね。 GIFTEDでシルバーを使っている場面はやっぱり同じ銀色の素材を使う場面なのであればシルバーの方が経年変化も含めて味わい深いものが多いと感じている事が理由かもしれません。 GIFTEDで展開しているSV×YGのコンビアイテムをイエローゴールドメインで作るとなるとシルバーを使用していた部分にイエローゴールド、イエローゴールドを使用していた部分にプラチナという風になるのかなとは思いますけれど。

K:話が前後しますが、気のせい的な流れで言うと、素材の経年といった点もある種の錯覚というか画素数の違いみたいな所はあるのかな、とか最近は少し個人的に考えるんですよね。ゴールド・シルバーの経年云々に関しては素材による厳密な変化の違いっていう所は別としてという前提はありますが。 ゴールドだってシルバーほど如実では無いにしても質感だったりは変わりますし。 中身にピント合わせるか輪郭にピント合わせるのかの違いみたいな。

アイアンとゴールドの組み合わせ等といった所からジュエリーラインとして立ち上がったYESですが、GIFTEDとの住み分けについてお聞かせ下さい。 個人的には色々とお話してますが今一度この場を借りて改めてざっくりと。

M:確かに、ゴールドの経年変化はシルバーの其れとはまた違いますが経年によって銅の赤みが徐々に強く出てきたりとゴールド特有の変化もあるにはありますよね。 硫化によって造形の立体感が際立つというのはやはりそれはそれで物凄く強いシルバーの持っている特性だとは思いますけれど。 仕上げられて間もない、所謂新品の状態のジュエリーって人を遠ざけかねないような強い輝きを備えているように感じる事も多いのですが、着用に伴って石の輝きも地金の表情も自然な風合いに落ち着いて、ある時から着用者と調和するようなタイミングがあって、そういう段階を経たジュエリーの佇まいというのは新品のジュエリーが持っていない独特の存在感を纏っていてグッと来ますね。

着用者と同化し得るような、作りのうえでのタフネスさみたいな観点から見ると、所謂シルバーアクセサリーというムーブメントが結果的に残した量感的な様式や美意識というのは一過性のものではなくて結構芯がしっかりしているようにも感じたりします。

YESとGIFTEDの打ち分けに関しては、GIFTEDが90年代に日本を席巻したシルバーアクセサリームーブメントを踏まえた更新だとすると、YESはどちらかというとブライダルを含むハイジュエリー、ファインジュエリーの文脈を前提としたラインではあるのですが、やはり着用者の観点からはYESのほうが自分から少し距離があるというか、やや遠くに位置しているラインになるので、今後どういう展開にしていこうかなというのをここ数年決め兼ねていたりはしますね。

GIFTEDにせよYESにせよ、やっぱり今この時点で見通せているのってせいぜい半歩先程度まででしかなくて。次に手を動かすならコレっていうのが何となく見えていて、とりあえずは其れを作らない事には進まないというか。GIFTEDはもう来年へ向けて何点かコレを作ろうというものがあるのに対してYESはとりあえず試してみたい、上手くいくかすらも分からない技術的なハードルがあるのでとりあえず其処に斬り込んでみるしかないなという具合なので、行き当たりばったり感はYESの方が強いかもしれませんね。

でも手堅い事と全く先行きの分からない方向と、その双方に取り組むというのが自分にとっては大切だったりするので今の時点だとこの2つのラインでの打ち分けというのはバランスを取る上でも必要な取り組みだとは思います。 わからない事こそ大切に育てた方が良い場面ていうのが今までの経験を踏まえると圧倒的に多いので。

K:着用者との距離が縮まっていく変化と、距離が開いていく変化、距離を縮めていくスピードと、スピードを超越していく距離。 キュビズム的思考でみるといろんなメタファーが溢れて来て面白いですよね。 何が正解だとかどうとかではなく、いい所を見つけていく作業って醍醐味な訳で。 あくまで一消費者目線で言うと具象化されたものを多角的に観察すると色んな自分の思考が豆粒みたいにパチパチ発光して少しトリップする時がありますが、そういう時って物事の楽しさみたいなのがいい具合に発酵してる時だと思います。

本当の調和って物の経年変化もですが、自分からもその変化に対して歩み寄っていく事だと思うんで、そういう熟成みたいなのって大切に感じますね。

脱線しそうなので話を戻しますが、シルバーアクセサリーの一過性じゃない様式や美意識ってとこには同意です。 先の歩み寄りって観点だとライトだけど分かり易い集合地点(物の経年変化と自身の経年変化)って捉えると座標としての安定感がある様に感じますし。

YESについては二人でそういう話もしてましたもんね。 いい意味での放し飼いというか何というか。 再確認の場であり、発見の場であり、実験的な場でもあるといった。 ただ、仰っている内容を踏まえると鉄って素材はやっぱり面白いですね。 銀や金は調和後静止する様な印象が持てますが、鉄はその後も動き回ってまた離れて行くような変化が見られたりしますし。

M:そうですね。 物体は貴金属含めて当然に経年で変化するわけですが人間のマインドも変わって当たり前だし常に変化するべきだとすら思っているタイプなので、時代や着用者の精神性の変化に振り落とされないような普遍性というのを僕はジュエリーをとおして追求しているのだと思います。

あと、個人的に嬉しかったりするのは窪田さんの仰る「思考が発酵するタイミング」についてなのですがGIFTEDは割と初見は当たり障りがない感じで受け取られてスルーされるような場面も、特にブランドスタートしてからの数年間では少なくなかった印象なのですが、一度素通りされた方がふと戻ってきて手に取ってくださるという場面が多かった気がするのですよね。

お客さんが能動的に、且つ理性的に色んなジュエリーと比較検討したうえでGIFTEDを発見してくれたからこそ生じる時差だと思っているので、そういうお客さん側で起きる発火現象みたいなものを静かに待ち伏せるようなブランドでありたいなと思いますね。

暫定的な「今はこう」っていう、その連続性の中で見える景色をまだ暫くは堪能し続けたい

M:知らなかったものに不意に出会って、それを自分なりに考えた末に何処に置くのかって凄く大切な事で、そればっかりは潤沢な資本で仕掛けた広告とかではなし得ない内的な体験だと信じていますね。 まぁ時間はかかるので茨の道だなとは思いますけれど、性分なので仕方ないと割り切ってます。

YESはあくまで今の時点では、という条件付きですが以前にもお話したとおりブライダルを除外すると完全に実験的なチャンネルという置き所です。GIFTEDもそうでしたし、ここから徐々にYESの人格みたいなものも定まってくるタイミングが来るとは思うのですけれど、それまでは何も決めつけずに色々と模索しながらやって行こうと思います。

鉄に関しては何ですかね、貴金属と比較するとやはり静止しない「死」を前提とした素材だなという風に捉えているところがあって、其処が圧倒的な魅力だなと感じていますね。 貴金属が唯物論的な観念におけるヒエラルキーの上位の存在だとすると、鉄は精神的な領域への橋渡し的な素材だと思うのですよね。

僕自身がどちらに比重を置いているのかというとやや後者に寄っていると思いますが、そこに関しては定めず揺らいでいる位の立ち位置がしっくり来ます。 何事に対してもそうなんですが、何も決めたくないのですよね。 わからないままにしておきたいというか、わかった気になりたくないというか。 あくまで暫定的な「今はこう」っていう、その連続性の中で見える景色をまだ暫くは堪能し続けたいと思っています。

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最終章となる第3部では理想とするジュエリーについて話をうかがっていく。

INTERVIEW<GIFTED designer/増﨑啓起>①これまでの変遷

INTERVIEW<GIFTED designer/増﨑啓起>②素材とオリジナリティ

INTERVIEW<GIFTED designer/増﨑啓起>③理想とするジュエリー

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