ito atsuko 個展「動き始めた記憶」【Fuligo本店】
いかなる人間も自分自身の掟に従って自由に生きたいと思う。
※フリードリヒ・フォン・シラー著『メッシーナの花嫁』より
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ito atsuko 個展 「動き始めた記憶」
会期:4/15(土)- 4/30(日)
会場:Fuligo分室
期中店休日:21,28
作家在店予定日:15
できる限り上下や中心のない、囚われのない感覚で世界にリンクしたい。
ものを作ることはそんな自分をニュートラルにしてくれる最善の方法である。
日々、手が覚える発見は続き 全ての答えはいつも先送りになる。
問い続けるその時間を、十分に味わうことが活動の根幹である。
そんな中、ものから発せられる、言葉や概念のはざまにある気配を
制作したものを介して、使い手の方と共有できることが唯一の成果である。
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大切に温めて来たito atsuko作品の展示、今回は一室全て使用した初めての個展です。
催事はコロナ禍前の2019年以来。
短いようで長いこの期間で明確に変わったとこの場で感じるのは、より価格といった記号を割愛してものを選ぶ人が老若男女問わず増えた事。
量より質というか、今この一瞬の最大風速よりも、いかに長くこの風を心地よく想えるか、という長期的な予見を以って選んでいく人が多くなったような印象を受ける。
それは見え方というよりも、個人個人の見方が自然とそういった方向へ向いて行ってるんだと思いますが、なんだかとても自然でいい流れだな、と僕個人は感じています。
歓楽街にほど近い怪しい立地のこのお店でものを選んでくれる人々は、表面的な所にいい意味で頓着が無い方が多く、栄のメインストリートから少し外れたこの場所にわざわざ足を運んでくれている方が大半です。
場当たり的なものではなく、自分の意志と想像力を働かせながら先を見て選んでくれる喜びみたいなものはそういった方々と触れ合う中で日々顕著になっていっています。
今展に先立ち、主題をどういった所に据えるか、といった問答がありました。
これまでの”何”を伸ばす会期とするのか、といったやりとりでしたが、その末「主題はito atsukoで」とお願いしました。
今現在のito atsuko作品が自由に飛び交う空間・時間とする。
これは4年という歳月越しの会期という事で、原点回帰といった月並みな意味合いも含んではいますが、何よりこの会期を制約の無いものしたかったからに他なりません。
「伸ばす」という行為とは異なるかもしれませんが、土に喩えるなら「起こす」といった形容に近いのかもしれない。
今まで根付いたものなどを一度取り払ってふわふわの土に均す。
新規古参分け隔てなく、等しく個人個人がその場に参加し、想像できる余地を可能な限り大きくしたかったのです。
僕自身10年以上ito atsuko作品のファンですし、振り返れば長らく彼女の作品を紹介させて頂いていますが、まだまだ分からない事も沢山あります。
その上で『釈然としない手持ちの何となく』『漠然とした身近な何となく』で小さくまとめたり形作ろうとするのではなく、分からない事をそのまま純粋に広げた会期にしたいと思い至りました。
0から見れる会期とする事で、『答えが分かる機会』ではなく、もっと導入的な『知る事を始める機会』にする事が出来るのではないか。
この会期を通った後に「伸ばす部分=ここに育つもの・植える種ないし樹木にあたるもの」を各々の中で想像して貰いたいと考えます。
『できる限り上下や中心のない、囚われのない感覚で世界にリンクしたい』
冒頭に記された彼女の言葉がきっと全て。
ジュエリーと呼ぶにはあまりに大きな形状、退廃的な金属、散見されるセオリーとは異なる仕上げ、不明瞭な素材、不完全に映る静かな塊。
それを美しいと感じた。
そして、それは確かにジュエリーだった。
自身が初めて心動かされた時の記憶、そこは穏やかでやわらかな土の匂いがする。
知れば知るほど分からなくなるから、その度ここへ戻って来ようと想う。
窪田
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