INTERVIEW< yuka ishikawa >

切り絵・絵画・粘土等、様々なツールを用いて自身の内外にある美意識を作品へと昇華する作家いしかわゆか。

今インタビューでは彼女が制作を始めたきっかけや、制作に携わる想いについてお話をうかがった。

制作を始めた理由、更には作家として最初に切り絵を選んだ理由

2008年のお正月に切り絵を始めました。

新しい仕事が始まるまでに一ヶ月くらい時間があって、その間何かしたいなと思って。

なんとなく折り紙で雪の結晶を作りたくなって(折りたたんでハサミを入れて、広げると雪の結晶ができるという工作)、それが全ての始まりです。

それから一ヶ月後、友人のギャラリーカフェで初めての個展を開催しました。

今思うと、最初からそういう試練(?)があったのはとても有り難い経験でした。

そのおかげで、今現在も生活の中に制作を組み込むことが自然にできているのだと思います。

元々、図工の成績は良くなかったし、決められたテーマを元に決められた物を作るという行為は向いていなかったのですが、「作る」こと自体は好きで、趣味で絵を描いたりアクセサリーを作ったり、色々なことはしていました。

絵画などのアプローチも経て金属(アクセサリー)を作ろうと思ったきっかけやターニングポイント

私が切り絵を始めた頃に流行っていたSNSで知り合った方と展示をさせていただいたのがきっかけとなり、主に名古屋や関西で切り絵の展示の機会をたくさんいただきました。

平面の切り絵から立体の切り絵、そして切り絵のインスタレーションへと作品の見せ方も変化していった最中、大阪で切り絵のインスタレーションの展示を観に来てくださった方(その方は当時大阪でギャラリーを運営、アパレル関係の展示会をオーガナイズされたりしていました)に「切り絵を服飾に活かせないか」というご提案をいただきまして。

すごく面白いと思って、その方と試行錯誤した結果、切り絵のアクセサリーが生まれました。

当初使用していた素材は紙ですが、耐久性や見せ方を追求していくうちに透明なフィルムに行き着きました。

ここからオブジェなどにもフィルムを用いたものが増えていく事になります。

そんな中ご縁をいただきフーリゴさんのギャラリースペースで切り絵の個展を開催。

その後、切り絵のアクセサリーを取り扱いいただくことになって、より本格的にアクセサリーを作っていく事になったんです。

フーリゴさんに通い、他の取り扱い作家様方のジュエリーを拝見しているうちに私も金属を使った作品を制作してみたくなり今に至ります。

元々粘土などを好んで触っていた経緯もそれまでにあったのでワックスを使って物(原型)を作るのにも抵抗なく没入できたような気がします。

鋳造屋さんにお世話になる工程があったりするので自分だけで完結できるものではなくて、最初はそれが新鮮でした。

ただ表現するだけでいいというジャンルでもなくて、ジュエリーとしての許容サイズ、個々の体のサイズ、素材の硬度や強度、付け心地など並行して検討しなくてはいけない事項がたくさんあるので、擦り合わせを難しく感じる時もあります。

金属を用いての制作活動は、その枠の中でどれだけ自分の作品として表現できるかだったり、逆に枠をどう飛び越えられるかだったり、そのようなチャレンジをできる事がとても面白いですね。

たくさんの有り難いご縁とタイミングのおかげで今の私が存在していて、出会った全ての方と全ての展示会に改めて感謝しています。

少し変わった経緯ではありますが、元々アパレル関係の仕事をしたいと思っていたけれども断念したという過去があり、巡り巡って今こういった仕事をさせていただいていることがとても感慨深いし嬉しいです。

制作を通じて表現したいものは?

「朽ちる肉体、永遠なる魂。無骨で繊細、歪で愛おしい。」をテーマとし、「命」を表現するアートピースとしてのジュエリーをイメージして今は制作しています。

近年におけるジュエリーのモデルは96歳の祖母、私のミューズです。

歳を重ねた祖母の手は純粋に美しく、また、私の表現したいテーマにぴったりで。

作品に深みを出してくれてありがとう、といつも思っています。

振り返ってみると、心の奥底にある想いや考え方はきっと昔から今までそれほど変わっていなくて、ただ、昔はネガティブな想いを詰めたネガティブな作品、スタートからゴールまでネガティブという感じの作品が多かった気がするけど、今はそこを経由して最後にはポジティブな感情、希望のようなものを託したいなと思うようになりました。

というのは、ジュエリーは特に、お守りだと思っているんですよね。

つけてくれる人にとってのそれは硬い鎧でもいいし、柔らかい繭でもいいし、どんなものでもいいけれど。

護れたらいいなあと。

そこに至るまでの特別な経験や体験は、特になかった気がします。

ただ、人の生死に触れる機会が増えてきて、命というものを考えることが多くなってくる中で日常生活に対してシンプルな愛おしさを覚えるようになって。

でもそれは未来永劫続くわけではなくて、その有限性に悲しさや恐怖も覚えて。

そういう感情を引っくるめて丸めて、その外側から俯瞰して包み込むイメージかもしれない、最近表したいことや表していること、それを言葉として伝えるのであれば。

作品制作時の構成や、今後大切にして行きたいと想う事。

現実的なことを言ってしまうと、「展示会での発表」に関しては、各展示会で求められているジャンルやテーマ、バランスによって出展する作品を切り絵にするかジュエリーにするか、それとも両方にするかを考えます。

基本の制作活動においては、手段の為の制作でなく、制作の為の手段であるので、表現したいことを表現できるツールとして切り絵とジュエリーは両方とも大切であり、何の区分けもありませんし、今後もしかしたら他にツールが増えるかもしれないし、減るかもしれない。

実験と追求の日々ですが、表現したいことが表現できれば、どんなジャンルでもいいと私自身は考えています。

今は正直アグレッシブなものは特になくて。

いつどんなチャンスが来ても対応できるようにインプットとアウトプットを継続していきたいというシンプルな気持ちだけが育ってると思います。

愛しいことを見失わないように。

それはなんなのか、…なんだろうねえ。

身の回りにある当たり前な幸せを拾いながら、純粋に楽しいことを今はただ増やしていきたいです。

自分にとっても、自分に関わってくれている人たちにとっても。

「楽しく作品を作って、楽しい展示会をして、楽しく打ち上げをしましょう」

そういう単純明快なサイクルの上で制作と生きていけたら幸せだな。

<了>

窪田


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