<11/3-11/19>キタムラマサヒロ個展「変遷」【Fuligo本店】
キタムラマサヒロ個展「変遷」
2023.11.3 – 2023.11.19
“不安定な場所からの眺め。
きっと新しい景色が見える。
時が経ち、古びては通り過ぎて行く物事。
しかし、『通り過ぎる事』は『終わり』では無い。
僕らは日々、微々、変化しながら新しい形をみつけて行く。
髪、花、写真、表情、景色。
きっとその時々、一瞬一瞬に散りばめられた其れは全て一度は通り過ぎた新しい物。
不安定な角度、不規則だけど確かに進む時間の中に覗く、あなただけのアクセサリー。
一つ一つ大切に結んだ、懐かしくて新しいアクセサリー。”
上記は2015年、はじめて彼と一緒に開いた個展時の一文。
今よりもっと青臭くて、右も左も分からないまま手探りで何者かになろうと藻掻いていた頃の言葉だ。
彼とはアパレルブランドnusumiguiの旧アトリエで出会った。
当時の僕はこのお店に立ち始めたばかりで、彼はその時美容師だった。
はじめましての挨拶を交わした後、お互いの身の上話を重ねながら、名古屋へ来た際にはお店に遊びに来てくださいと伝えてその場を終えた。
それから暫く経って、彼が名古屋に遊びに来てくれた。
小さなお店に何時間か居たと記憶している。
「これまでの人生でアクセサリー・ジュエリーにあまり触れて来なかったけどこれは楽しいですね!」と彼が伝えてくれた。
美容師という仕事からもっとヘアメイクを交えたアーティスティックな活動へのシフトを模索していた彼は、これを機に独学でアクセサリー制作に打込むようになる。
そしてその後、自身の作家デビューとしてこの場で個展を開催する事になる。
毎日するメイクや髪型のセット、何気なく繰り返す日常にアクセントを添えるものが中心で、バレッタやイヤカフなどの顔周り、髪をかき上げる際に覗く事をイメージしたリングが少々といったラインナップがスタートだった。
素材はエクステンションや箔、樹脂を用いた作品が主流だ。
今の作風よりもハンドメイド感が色濃く、キッチュな印象を穏やかに備えたものが多かったと思う。
2年続けて個展形式での展示販売会を開催した後、しばらくこの場での催し(個展)に間を空ける決断を僕らはした。
僕は彼の事を信頼しているし、今後もそれは変わらないだろう。
ただ、仲良しこよしで何となくやってくのは嫌だった。
発展途上なまま、伝わる人にだけ伝わればいいといった狭いグルーヴに逃げている気がした。
そこを目指すのと、それを免罪符にするのは全く違う。
目指していると言い切れる程当時の僕らは広い視野や奥行のある思考を持ち合わせていなかった。
惰性で続けていくのではなく、お互い一度離れて、お互いで力をつけて又一緒に何かをしよう。
そう約束して今日に到る。
歳月は経った。
別に何者かになれた訳ではない。
ずっと僕は僕で、彼は彼だ。
でもあの頃よりも説明出来る事は増えた。
それは真摯に、そして時に適当に、匙を投げず粛々と過ごしてきた自信に起因する。
漠然と祀り上げた何者かへの変身願望の正体はきっとなりたい自分だったのだと気付いた。
そして今でも間違いなく各々の中になりたい自分(何者か)が在る。
僕と離れてから彼は彫金を本格的に初め、自身のアトリエショップ「hitotsumusubi」を構えた。
今までの自分とこれからの自分、それを固く結び留めつつ、退路を断ってやるしかない状況へ一気に自分を追い込んだのは本当に彼らしい。
暮らしていく事だけでも一杯一杯の状況から、ただただ誠実に一歩一歩を踏みしめながら、少しずつ階段を今日まで上って来た。
今の作品は以前とは異なり金属を用いた造形が主流だ。
試行錯誤を繰り返しながら、今までクオリティを高め続けてきた事がものからもしっかり伝わってくる。
でも、始めた頃の青臭さの名残も僕は感じている。
不格好な様でまとまっていて、具象的な様で抽象的な造形の上に人間味を感じる。
それは彼自身がこの小さな作品の中に内在している事を指している気がする。
アトリエショップを設けて丸5年、10月を以って彼は今の場所「hitotsumusubi」を閉じて違う場所へ移って行くという。
固い結び目を一度解きほぐす事にした。
そうして始まりの場所であるここにまた戻って来る。
「はじめまして」の響きに近い「久しぶり」
“不安定な場所からの眺め。
きっと新しい景色が見える。
時が経ち、古びては通り過ぎて行く物事。
しかし、『通り過ぎる事』は『終わり』では無い。
僕らは日々、微々、変化しながら新しい形をみつけて行く。
髪、花、写真、表情、景色。
きっとその時々、一瞬一瞬に散りばめられた其れは全て一度は通り過ぎた新しい物。
不安定な角度、不規則だけど確かに進む時間の中に覗く、あなただけのアクセサリー。
一つ一つ大切に結んだ、懐かしくて新しいアクセサリー。”
一度離れたあの頃と同じ言葉を持ってこの会期を迎える。
きっと新しい景色と出会う。
キタムラマサヒロ個展「変遷」
会期:11/3(金)~11/19(日)
会場:Fuligo分室
期中店休日:10,17
2020年に一度イベントを予定した事もありましたが、コロナ禍に突入した事もあり断念。
その時は無念さに大分肩を落としましたが、今となっては「あのタイミングではなかったんだ」と振り返る事ができる。
それくらい、この3年の間に積み上げて来たものに自負がある。
あの頃出来たであろう最大限はこの時の為の布石だったんだという確信がある。
今展では彼が手掛けるジュエリーレーベル「maaa(マー)」によるシルバー製の作品を中心に並べ、ここまでの「変遷」を空間を用いて表現します。
既知の方から未見の方まで、幅広い方々にご覧頂ける機会となる事を願っています。
『変遷』
時の流れとともに趣味嗜好、生活環境であったり、様々な関わりというものは移り変わっています。
作品の話でいうと
日々時間が過ぎゆく中で
確実につくれるデザインの種類は増え、つくりたい作品も増えています。
そんな中新しく生まれる作品たちは
自分の中で今までで1番良いものが生み出されているという感覚がありました。
だけれども、過去の作品たちを見ていると
今の作品と比べて、劣るということはなく、
比べることのできない良さを感じる作品たちがたくさんいることに気がつきました。
そしてそう感じると共に、その共通点にも出逢うということができました。
それは、その時に本当につくりたいという作品と向き合っている、つまりはその時のベストを尽くしているということでした。
『今』と向き合うこと
それが行われている瞬間というものは
いつまでも変わらない、不変的なものであると感じています。
いいものは変わらない。
もっと細かく言うと、良いとか悪いとかの座標では測ることはできないものがあると思っています。
未来や過去というものは今という時間でしか変えることができません。
今年のcollection発表は
今どう過ごしていくのか、今何を選んでいくのかという、時間に目を向けることをテーマに表現をしました。
現在1番伝えたいことではありましたが、
今までの作品を見る中で、結局はここに繋がる歩みをしていたのだとそう感じています。
はじまりの場所があり、
そしてお店が生まれ、
育んだお店をcloseすることにより
また、はじまりの場所へと戻ってきました。
今回の展示では、
今までの移変わり、様々なラインナップを並べての変遷を感じていただければと思います。
masahiro kitamura / キタムラ マサヒロ
窪田
<Schedule>
10/14-10/29:hiroko miyamoto (分室)
11/1-11/30:Maison de l’abeille (店頭)
11/3-11/19:キタムラマサヒロ個展(分室)
11/11-12:FREijA カスタムコートオーダー会(分室)
11/11-11/26:ELCAMIカスタムオーダー会(店頭)
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